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医療



新年度では、生活や経営に直接かかわる制度が変わった。 東日本大震災で大きな被害が出た岩手、宮城、福島の3県では、延期されていたテレビの地上デジタル放送(地デジ)への完全移行が完了した。復興財源計10兆5000億円を確保するための復興臨時増税のうち、法人税の増税も始まり、実効税率を5%引き下げた上で、3年間は10%の上積みとなる。東京電力福島第一原発事故の影響も続く。東電は、工場やビルなど大口顧客向け電気料金を平均17%値上げした。対象となる全23万7000件のうち、契約満了を迎えたのは5万件。残りは、値上げに同意した一部の顧客を除き、現在の契約期間が終わるまで旧料金のまま据え置かれるため、東電で説得作業を続けている。厚生労働省は、食品に含まれる放射性物質の基準を厳格化し、一般食品では1キロ・グラム当たり100ベクレルを限度とした。病院や診療所を受診したときの治療や検査にかかる費用が変わる。また、抗がん剤投与などで外来負担が大きかった人は事前手続きをすれば、窓口で一定額を超えた支払いをせずに済む。医療に関する変更点を、いくつか選んでお伝えする。内科と整形外科、内科と眼科など、同じ日に同じ医療機関で2つの診療科を再診する場合、2科めでも再診料がかかる。慢性疾患などで複数受診をする高齢者には負担増となりそうだ。これまでは、例えば内科を再診するついでに同じ病院の整形外科を再診しても、再診料は1科分しかかからなかった。2科めにも再診料340円(自己負担は1~3割)がかかる。患者負担は重くなるが、医師らが、かねて「別の日の診察なら請求できるのに、同じ日だと2科めの再診料を請求できないのは、医師の技術が評価されないようで著しくやる気が下がる」と算定を求めていた。負担増を考慮してか、2科めの再診料は1科めのほぼ半額。同じ病気が原因で複数の診療科にかかる場合や、同じ医師が2つの診療科を診る場合は対象にならない。 「時間外だけれど、かかりつけ医に相談できれば…」と思った経験は誰でも一度や二度はあるのでは。患者が夜間に病院に駆け込むのを避ける意味もあり、診療所で時間外もかかりつけの患者の相談に応じる所には加算がある。だが、届け出をする診療所は、石川県が5割超と際だつものの、全国平均は23%にとどまる。多くの診療所が手を挙げることが期待され、「時間外対応加算」と名前を変えて再スタートする。医師の間で「24時間対応が必須」との誤解もあったため、対応方法が明確化された。患者の問い合わせに診療所で常に対応、夜間の数時間を診療所で対応。深夜や休日は留守番電話などで救急医療機関を案内、複数の診療所が連携し、当番診療所が夜間にも対応。深夜や休日は留守番電話などで救急医療機関を案内-の3形態だ。医師がカルテのない場所で患者の相談を受けるのは難しいから、届け出ができるかどうかは診療所の形態にもよる。ただ、過度な要求を恐れて届け出をためらう医師もいるようだ。届け出は診療所単位だから、患者個人ができることは少ないが、患者も日頃からかかりつけ医と信頼関係を築き、地域医療をつくっていく素地が必要だ。中には、せちがらい改定もある。入退院に占める金曜入院や月曜退院の割合が特に高い病院は、手術や高額の処置を伴わない土日の入院費が減額される。厚生労働省によると、入退院の曜日別で平均在院日数が長いのは、金曜入院や月曜退院。厚労省は、数は少ないものの必要のない週末入院の多い病院の報酬を下げて医療費の効率化につなげたい意向だ。 開業医からは「週末に急変しそうな在宅患者に金曜に入院してもらうことはある。土日は病院側も非常勤医態勢なので、常勤医のいる金曜日に引き継ぎたいのに」(千葉県の開業医)と不安の声も上がる。しかし、減額になる医療機関は少なく、通常の対応に影響は出ない見通しだ。だが、該当病院の周辺では、関係者が“余波”に悩む。退院患者を受け入れる側の連携医療機関の院長は「病院の中には、金曜入院や月曜退院を、週末にベッドを空けない手段にしていた所はある。今後、今までとは逆に週末に患者を出してくれば、受け入れサイドでは土曜日午後の医師配置を常勤医で組む必要がありそうです」と言う。経過措置が設けられたが、実施まで影響が読み切れない。

基準値



食品中の放射性物質の暫定基準値に代わる新基準値が適用される。被曝(ひばく)の影響を受けやすい子供に配慮し、「乳児用食品」を新設。放射性セシウムの新基準値は暫定基準値に比べ4分の1~20分の1になり、大幅に厳格化された。新基準値では、穀類や肉、魚、野菜などの「一般食品」は1キロ当たり100ベクレル、粉ミルクやベビーフードなどの「乳児用食品」と「牛乳」は同50ベクレル、「飲料水」は同10ベクレルとした。一方、市場や消費者が混乱する可能性がある食品には経過措置を設定。検査に関するガイドラインも改正され、過去に同50ベクレルを超える放射性セシウムが検出された食品などを明示し、検査対象を細分化。これまで複数品目が出荷停止となった福島など6県を中心に、検査体制を強化する。生産者にとって死活問題になりかねない放射性セシウムの基準値超え。特に年1回の収穫に懸け、日々の作業を続ける果樹農家は大きな不安を抱えている。特定避難勧奨地点が点在する福島県伊達市。山間部の畑に立つカキの木の幹は、真っ白な木肌が目立つ。四方に枝を張るブドウの木も痛々しい赤茶色。いずれも高圧水による除染で樹皮が剥がれた結果という。「基準がどうあれ、木がある以上、とにかく作るしかない」。1ヘクタールの畑でブドウ、モモ、カキを育てる男性はつぶやく。昨季、周辺で収穫されたモモから1キロ当たり80~90ベクレルの放射性セシウムを検出。同500ベクレルの暫定基準値は下回るが、同100ベクレルの新基準値ならギリギリの数値だ。「除染すれば大丈夫なはずだが、ゼロでないと消費者も手にしてくれない」東電の補償は出たが「補償のためじゃない。おいしかったと言ってもらうため作っている」という。あきらめた農家もある。同じ山沿いで長年モモを育ててきた菅野重治さんは昨年、除染で出る廃棄物の仮置き用スペースを作るため、木の半分を引き抜いた。しかし残り半分の木の表面から1キロ当たり4万ベクレルを検出。「もう無理だ」と観念した。

原発



関西電力の原発4基が立地する福井県おおい町は、電源立地地域対策交付金を使い、農作物への獣害対策として鹿やイノシシなどが生息する山間部と、集落との間をフェンスで仕切る工事を始めた。町内の全集落が対象で、総延長約160キロ、総事業費約18億円。ただ、全集落で農作物の被害が出ているわけではない上、被害額は年平均500万円程度で、「無駄遣いでは」との批判もある。フェンスは高さ2メートル。町内63か所の集落を山と遮断するように張り巡らせる。人が山に入れるように、開閉式の扉を所々に設ける。2015年度の完成予定で、11年度は約68キロ分の計7億3300万円を予算化。このうち国の補助などを除いた残りの2億8500万円を交付金でまかなう。同町は、総面積212平方キロのうち90%が山林で、残る平野部で米や麦、ソバなどを栽培。1990年頃から、獣害が出るようになり、町村合併後の2006~10年度の被害は計約2500万円となっている。旧大飯町時代の1994年から、町の補助と農家の負担で集落ごとにトタン板や電気柵を田畑の周囲に設置。ところが、柵を跳び越える鹿もおり、最近も被害は続いている。新たな対策を求める声も強く、町は「耕作を断念した人もいる。交付金を活用し、農業環境を整えたい」とフェンス設置に踏み切った。しかし、被害額の割に費用が莫大(ばくだい)で、町議の一人は「ある程度有効だろうが、被害のない地域にまで設置する必要があるのか」と話している。原発の立地・周辺自治体に配分される電源3法交付金は、さまざまな形で暮らしの底上げに使われてきた。例えば、嶺南の自治体は子どもの医療費助成を先行して実施。2010年10月の県の制度拡充まで多くの自治体が「就学前児童の無料」にとどまっていたのに対し、嶺南の全4町はいち早く中学3年まで無料としていた。「子どもは病院だけでなく歯科医などに通う機会も多い。医療費無料が一番助かっている」と話すのは小学生と保育園児を持つおおい町の主婦。町内での暮らしやすさを実感している。財源として、原発がない若狭町を除いて電源3法交付金が活用されている。おおい町は10年度、負担額約1420万円のうち500万円を同交付金で賄った。ただ「子どもの医療費に原発の交付金が使われているとは知らなかった」と語る町民もいる。1972年に37・8%だった嶺南の道路舗装率は09年には88・2%に上昇。嶺北を上回る伸び率だ。09年の上水道普及率は98・3%、下水道は86・6%と嶺南の方が嶺北より高い。6歳未満児1千人当たりの保育所整備数は80年の4・56から09年には6・82にアップした。立派な文化施設や教育施設、グラウンド、道の駅なども整備された。時岡忍おおい町長は「昔はスポーツ施設や温泉など何一つなかった。原発を誘致しなければ、細々と町運営していただろう」と語り、同交付金が住環境の向上につながったと力説する。電源3法交付金の財源は、電力事業者から徴収する電源開発促進税。1千キロワット時当たり375円が電力料金に上乗せされ、消費者が支払っている。制度が創設された74年度から09年度までに県と市町に交付されたのは計約3245億円。10年度の交付額は、県が約91億円、市町が約126億円の見込みだ。ただ、立地市町の財政を潤す一方、03年度の制度改正までハード事業に使い道が限定されていたため“ハコモノ行政”を助長する結果となった。「目的税として導入したのが問題だった。特定官庁の占有財源になった上、新規立地が進まず金が余り、新たな交付金を次々つくる悪循環に陥った」とみるのは福島大の清水修二副学長(財政学)。実際、福井県が自治体向けの手引書を作るほど制度は複雑だ。しかし、ある立地市町の首長はこう反論する。「電源3法交付金は“悪いカネ”で、他の補助金は“良いカネ”みたいに色分けされるが、国庫依存という点では変わらない。他の自治体も補助金や交付金、交付税措置される有利な起債を使っている」新設された「核燃料サイクル交付金」と「原子力発電施設立地地域共生交付金」は、それぞれプルサーマル=Wワードファイル=計画への同意と30年超運転が交付条件となる。清水副学長は「事後的な交付ではなく、お金を出すから受けないかという駆け引きや取引の手段になる」と指摘。「期限に間に合わなければ出しませんよと露骨に利益誘導した」と国の手法を痛烈に批判する。制度を改めて「環境税」として使途を拡大し、立地地域が脱原発の道を歩む施策にも活用できるようにすればいいと提唱する。原発の先行きは交付金の在り方も大きく左右する。2人の未就学児を持つおおい町の女性は、考え込まざるを得ないという。「原発がなくなって今のサービスが受けられなくなるのはとても困る。でも、子どものことを考えると万が一の原発事故は怖い。複雑な心境」